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新作兜製作秘話 最終回

今回このシリーズの最終回として、製作過程の全様をお知らせ致します。
拙者の仕事上の都合で、公開が遅れ遅れになりまして申し訳ありません。
なんせ名古屋は新空港や万博やらでゴッタ返しになっていて、それに年度末なども重なり一言で言えば「拙者グチャグチャ状態」でありました。 そんな関係で兜作りも2月後半から3月いっぱいまで、まったくと言っていい程手がつかず状態でした。
しかし、4月の尾張「郷土歴史祭り」には何としても被りたい気持ちがあり、どうやって時間の工面をしようか?・・・、寝ても覚めてもそのことが気になっていました。
最後の手段として、会社を休んで工房に行くか、それとも毎日夜なべを覚悟で工房へいくか、・・・でかなり迷いましたが、後者+会社ズル休み1日を決め込んで、約1週間で仕上げてゆくことにしました。

まずは塗りであります。  
本来なら「漆」ということになるのですが、今回の場合は時間がないのとアルミのイベント用ということもあり、カシュー塗料(カシューナッツの殻から搾り出した物)を使用しました。この塗料は「カシュー漆」とも言い、自然塗料であり、その仕上がりが漆のように盛り上がった感じの仕上がりと風合いがでるのが特徴です。

そして塗りが終了してから、乾かないうちに「古び粉」を万遍なく振り掛けて、塗料乾燥後にその古び粉を吹き払う。

その理由は、「兜に古さと風格を与える」のが目的です。
新品で艶々もいいのですが、やはりここは「歴戦の兜」のイメージを作り出し、どんな甲冑にも素早く合うようにする為です。
吹き払った後はこんな感じです。

さあ!これで全てが準備万端!
いよいよ一つ一つの組み立てであります。 まずは浮け張りの取り付けですが、頭部のフィット感と深さ感を見ながら裁縫糸での仮止めを行い、兜外への返し部分は接着剤でシッカリと止めます。

次は期待の「糸威し」です。今回は白糸を小川先生の勧めで選択しました。 戦国や安土桃山期にそんな色があったのか?と思いきや、先生が言うには、高級武士の甲冑にはよく使用されていた・・・ということで一安心。 また小川先生が現在製作を進めている甲冑に一部その白を使用するらしく、糸屋から染め上がったものがちょうど届いたことも選択の範疇でした。

しかし素懸けとはいえ、裏表を間違えないように通し、表に出た糸は綺麗に広げながら安定させる。菱綴はちょっとコツがいります。 これは言葉ではなかなか説明が難しいので省略します。 そして威している時にいつも再調整させられることは、シコロと次の段のシコロとの糸威間隔です。 簡単に見えるのですが、結構時間が掛かり、非常に難しいです。

そして紆余曲折ありながら完成。

この糸威しだけで時間にすると約8時間掛かりました。 仕事が終わって工房へ・・・が三日間続きましたが。

最後は兜へのシコロの取り付けです。
一段目の止鋲は手作りです。 先生は「何でも自分で作ることが重要! 戦国時代は今日のように道具や部品が売っているわけではないから、甲冑師は全部自分で製作していた」そうです。

ハンダ付けを終えた4個の止鋲で一段目のシコロ部をシッカリと固定します。

すると全体がこんなふうに、カッコいい「日根野型シコロの頭成兜」になりました。
なかなかいいでしょ〜!

そして最後に「前立」です。
何を・・・どんな物で・・・と色々悩みましたが、やはり一番自分を出せるものとしては家紋であろうと考え、拙者の稲垣家の家紋である「抱茗荷紋」をカッコよく作ろうと思い立ちました。 まずは型取りですが、本来は○の中に抱茗荷が本当なんですが、多少大きく作りたい関係で、○がでかいとちょっと見苦しいので、写真のようにやや楕円形にしてしまいました。

角元受けの製作はどうやって・・・という話が聞こえそうですが、説明が難しいので割愛します。(言葉でないと説明しにくいのでご了承の程)
そして次にまたカシューで塗装します。 乾燥後に、下書きで紙に描いた茗荷の文様を切り抜き、綺麗に貼り付けます。 そして最後に金箔押しをして、金箔が乾燥安定した所で紙で貼った茗荷の文様部を剥がせば完成・・・になるんですが、時間が無くてまだこんな具合です。

非常に駆け足で最終完成までの話をしましたが、本当はたくさん説明を加えないといけない過程が山とあります。
しかしこのサイトでお伝えするには限界があり、言葉では難しい作業、えっ!と驚くような部品の製作、非合理的なのにこれしか出来ない製作過程・・・、考えてみれば企画大量生産するものではないので、全てが伝統工芸品としての枠を尊重しながらの製作でありますので、かえってそれが非常に面白い、興味深いということになります。

自分で製作した兜を前立未完成でしたが、先日の「郷土歴史祭り」で着用しました

結構評判よかったですぞ! 
後は前立に金箔押しを施し、次回の参陣地であります「米沢謙信公祭り」で皆々様の目を引こうかと考えています。

2005/04/20

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